AI時代に「人間」を証明する「World ID」、日本で展開加速 多様な企業・サービスで導入進む

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  • OpenAI CEOのサム・アルトマン氏らが設立したTools for Humanityが、AI時代におけるデジタル空間の信頼性を高めるため、自身が人間であることを証明する「World ID」の日本での展開を加速している。
  • World IDは、虹彩スキャンを行う認証端末「Orb」と連携したデジタルIDで、氏名や住所などの個人情報は不要、プライバシーに配慮した設計となっている。
  • 生成AIの普及に伴うなりすましやフェイク情報の拡散といった課題に対し、World IDが「人間性の証明」という解決策を提供する。
  • マッチングアプリ、ゲーム、SNS、店舗など、すでに多様な企業やサービスがWorld IDの導入やOrbの設置を進めている。

AI時代の「人間性の証明」への取り組み

生成人工知能(AI)の急速な発展により、インターネットを含むデジタル空間において、人間とAIやボットとの区別が困難になるという新たな社会課題が浮上している。これに伴う、なりすまし、フェイクニュースの拡散、不正操作といった問題に対処するため、「自身が人間であること」を証明する仕組みの重要性が高まっている。

このような背景の中、OpenAI CEOのSam Altman(サム・アルトマン)氏らが2019年に設立したグローバル・テクノロジー企業Tools for Humanity(ツールズ・フォー・ヒューマニティ)は、AI時代におけるデジタル空間の信頼性向上を目指す取り組み「World Project」を展開しており、日本国内での活動方針について発表し、導入拡大を加速している。

「World Project」の仕組みとプライバシー

「World Project」は主に4つの要素で構成される。ユーザーが人間であることを証明するための虹彩スキャンを行う認証端末「Orb(オーブ)」、それを管理するスマートフォンアプリ「World App」、認証が完了したユーザーに付与されるデジタルID「World ID」、そして暗号資産の「Worldcoin(ワールドコイン)」である。World IDの認証は2023年7月に開始され、World Appのユーザー数は全世界で2,600万人、Orbによる認証完了者は1,200万人に達している。

人間であることを証明する際の中心となる「Orb」は、AIと高精度カメラを搭載し、利用者の虹彩をスキャンする。このスキャンデータに基づき、「認証者が人間であること」と「過去にIDを取得していないこと」の2点が確認される。取得された虹彩情報は復号不可能な形式で暗号化された後、Orb本体からは即座に削除され、利用者のスマートフォンにのみ保存される仕組みとなっている。World IDは氏名、住所、電話番号といった個人情報を一切必要とせず、ゼロ知識証明技術により、個人情報を明かすことなくオンライン上で「人間である」ことを証明できるため、プライバシーに最大限配慮されているとTools for Humanityは強調している。

Tools for Humanity日本代表の牧野友衛氏は、人間性を証明できる仕組みがなければ、なりすましや詐欺、誤情報が横行し、社会の信頼が危機に直面するという現状を指摘し、「World ID」はその解決策であると述べている。

日本国内での展開加速と連携

Tools for Humanityは、日本での展開強化にあたり、生成AIの普及啓発活動を行う生成AI活用普及協会(GUGA)に加盟した。GUGAとの連携を通じて、生成AIの普及啓発活動やパートナーシップを推進していく方針である。GUGA事務局長の小村亮氏も、AI時代の新常識構築において人間とAIの区別が重要であるとし、Tools for Humanityとの協働に期待を寄せている。

国内では、博報堂との提携によるWorld IDの認知拡大や導入実証、P-UP Worldとの連携による「テルル」店舗でのOrb設置などが進められてきた。さらに、バロックジャパンリミテッドも一部店舗にOrbを設置するなど、様々な業種での取り組みが見られる。

World IDの具体的な活用事例

すでに日本国内の多様な企業やサービスで、World IDを活用した「人間性の証明」の取り組みが進んでいる。

生成AI活用普及協会(GUGA)

Tools for Humanityは生成AI活用普及協会(GUGA)に加盟し、生成AIの普及啓発活動や会員企業とのパートナーシップを推進している。AI時代における人間とAIの区別という重要テーマについて協働する。

Tinder Japan

マッチングアプリを展開するTinder Japanでは、Match Groupとのグローバル提携の一環として、年齢確認や本人確認にWorld IDの活用を予定している。マッチングアプリにおける信頼性向上と「人間同士の本物のつながり」促進を目指す。

Razer

ゲーム向けのパソコン周辺機器などを開発・販売するRazerでは、ゲーム内におけるボット対策としてWorld IDの導入を進めている。不正な自動プログラムによるゲーム環境の悪化を防ぐ。

TOKYO BEAST

暗号資産を取り込んだWeb3ゲーム「TOKYO BEAST」では、World IDをゲーム内に統合し、ユーザー認証の強化と健全なコミュニティづくりを推進している。暗号資産の保護だけでなく、不正プレイやボットによるサーバー負荷軽減といった目的でも活用される。

テルル、Baroque Japan Limited

総合デジタルショップの「テルル」やアパレルブランド「バロックジャパンリミテッド」の店舗にOrbが設置されており、来店者が人間であることを証明するための認証拠点となっている。これにより、店舗側はデジタルサービスの提供や会員登録などにおいて、信頼性の高い人間認証が可能となる。

Yay!、SARAH

SNSの「Yay!」やグルメレビューアプリの「SARAH」といったオンラインサービスでも、ユーザー認証にWorld IDの導入が進められている。ユーザーが「本物の人間」であることを証明することで、プラットフォーム上の信頼性を向上させ、偽アカウントやスパムを抑制する。

奉還町商店街

岡山県の奉還町商店街では、World IDの取得者にWorldcoinを配布し、地域商品券と交換できるキャンペーンを実施した。これは、商店街の活性化と地域振興を図ると同時に、Worldcoinの実利用を促進するという双方にとってメリットのある取り組みである。

Worldcoinの役割と課題

World IDと連携する暗号資産Worldcoinには、World ID取得者へのインセンティブ配布、World Project運営の資金源、そして将来的なプロジェクト方針決定における投票権といった役割がある。米国ではWorld Appと連携したVisaのデビットカード「World Card」も発表されており、実利用の拡大を目指している。

一方で、World IDには解決すべき課題も存在する。最も大きな点は、World IDが一人につき一つしか発行されないため、World Appをインストールしたスマートフォンの紛失や故障時に、バックアップを忘れていた場合などにIDを失ってしまうリスクがあることだ。セキュリティ上の理由から再取得が原則認められていないため、ユーザー自身によるデータ管理が必須となる。Tools for Humanityは、こうした復旧に関する課題やサポート体制の整備を今後の検討課題としている。

引用元:Impress Watch
AI時代に“人間”を証明するID 「Worldプロジェクト」日本展開を強化

引用元:Docomo Topics / Tokyo Chips
Tools for Humanity「World ID」で生成AIなりすましリスク回避へ 個人情報登録なし 虹彩スキャン個人識別「Orb」も拡充し「人間であることだけを証明」国内展開加速

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