「一部AI事業者、ルール無視し無断利用」新聞協会が声明、政府に制度整備求める

AI DeepFake

  • 日本新聞協会は6月4日、一部のAI事業者が報道機関の利用拒否の意思表示にもかかわらず、ニュース記事を無断で収集・学習しているとして、AI事業者に対しルール順守を求める声明を発表した。
  • 協会は、生成AIと検索を連動させた「検索拡張生成(RAG)」や、参照元サイトへのアクセスを減らす「ゼロクリックサーチ」の拡大に懸念を示した。
  • 無断利用は「著作権侵害に当たる可能性が高い」と指摘し、報道機関の機能低下が「国民の『知る権利』を阻害しかねない」と訴え、政府や国会にコンテンツ保護制度の整備を求めた。

日本新聞協会は6月4日、生成AI(人工知能)による報道機関の記事コンテンツの学習や利用を、事業者が拒否しているにもかかわらず、一部のAI事業者がこれを無視し、無断でデータを収集しているケースが確認されたと発表した。これに対し、協会はAI事業者に対してルール順守を求める声明を出し、政府や国会に対しても、コンテンツを保護する制度の整備を求めた。

「ゼロクリックサーチ」と無断利用に懸念

近年、「検索拡張生成(RAG)」という仕組みが急速に拡大している。これは、ユーザーの質問に対し、生成AIとインターネット上の検索を連動させて回答を生成するサービスだ。この結果、AIの回答でユーザーが満足し、参照元となったニュースサイトを訪れない「ゼロクリックサーチ」が広がる懸念が指摘されている。

こうした状況を受け、国内の新聞社や通信社が運営する主要なニュースサイトは、生成AIに記事が利用されないよう、サイトに利用拒否の意思を明確に表示する設定を施してきた。しかし、新聞協会によると、こうした意思表示にもかかわらずデータを収集する事業者が出現しており、協会の会員社の記事がRAGの参照先として表示されるケースも確認されているという。

著作権侵害の可能性と「知る権利」への影響を指摘

日本新聞協会は、文化庁が昨年示した「AIと著作権に関する考え方」に基づき、記事の無断利用が「著作権侵害に当たる可能性が高い」と指摘している。

声明では、記事の無断利用やゼロクリックサーチの拡大により、「報道機関のコンテンツにフリーライド(タダ乗り)する新たなサービスや機能が日常的に展開されている」と強く主張。その上で、「報道機関の機能が低下すれば、国民の『知る権利』を阻害しかねない」と訴え、政府と国会に対し、早急なコンテンツ保護制度の整備を求めた。

今回の声明は、生成AI技術の急速な発展が、著作権のあり方や報道機関のビジネスモデル、ひいては国民の知る権利に及ぼす影響について、日本のメディア業界が深刻な危機感を抱いていることを示している。

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