- モルガン・スタンレーのアナリストらは、米国が物理的人工知能(AI)分野で目標を達成するためには、中国との持続的な協力が必要であるとの見解を示した。
- 報告書は、中国がAI関連の製造分野で有利な立場にあり、今後5年間で中国の投入なしに米国国内へ製造業を完全に回帰させるのは非常に困難である点を理由に挙げている。
- 現在の米中間の関税や貿易の緊張がある中でも、国家間の競争と産業パートナーシップは共存可能であると強調している。
- テスラが、中国の製造技術を米国市場に協力的に導入する上で独自の立場を持つ可能性のあるリーダーとして挙げられている。
物理的AIの進展に不可欠な協力関係
モルガン・スタンレーのアナリストらは、米国が物理的人工知能(物理的AI)の分野で目標を達成するためには、中国との持続的な協力関係が不可欠であるとの見解を報告書の中で示した。物理的AIとは、ロボットや自律システムのように、物理的な世界と相互作用するAI技術を指す。
モルガン・スタンレーは、ジュネーブ貿易協議後の関税緊張緩和があったにもかかわらず、物理的AIにおける米国の長期的な野望は、中国との協力を欠いては孤立したままでは成功し得ないと述べている。
中国の「AI隣接」製造分野での優位性
アナリストらが協力の必要性を指摘する理由として、中国が「AI隣接」製造分野において「羨ましい地位」を享受している点を挙げている。これは、AIを物理的な製品やシステムに組み込むために必要な製造技術やサプライチェーンにおいて、中国が大きな強みを持っていることを示唆する。
モルガン・スタンレーは、中国からの投入なしにAI関連製造業を今後5年間で米国国内へ完全に回帰させようとすることは、「非常に困難」であると警告を発している。このため、米国企業と中国企業の間で、米国の地で製造される中国ベースの技術を含む重要な協力分野が見られても驚くことではないとしている。
競争と協力の共存、テスラを事例に
報告書は、国家間の競争は必ずしも孤立を意味する必要はなく、産業パートナーシップは共存できることを強調している。AIがデジタル領域から物理的なシステムへとシフトするにつれ、年末までに他の「より緊急かつ戦略的なトピック」が関税よりも優先される可能性を示唆した。
協力関係を促進する可能性のあるリーダーとして、電気自動車(EV)大手のテスラが挙げられている。アナリストらは、テスラが中国の製造技術を米国市場に協力的に導入するための独自のポジションを持っている可能性があると述べている。また、米国の消費者が高品質な中国のEVを引き続き求める可能性が高いことも指摘し、関税や貿易障壁がそのアクセスを永久に妨げることにはならないとの見方を示した。
モルガン・スタンレーは、テスラを引き続き同行の米国自動車部門における「トップピック」とし、同社の「ヒューマノイド100」というコンセプトにおける中心的な銘柄としている。
今回のモルガン・スタンレーの報告は、米中間の技術競争が激化する中でも、AIの物理的な実装という特定の分野においては、両国間の協力が現実的な選択肢であり、米国にとって必要不可欠であるという見方を提示するものと言える。
引用元:Investing.com
米国の物理的AI目標は中国との継続的協力が必要:モルガン・スタンレー