文部科学省が示す学校現場での生成AI活用法、専門家がガイドラインを解説

Children School AI

  • 文部科学省が策定した「生成AIに関するガイドライン」では、「人間中心の利活用」と「情報活用能力の育成」を基本方針としている。
  • 生成AIの教育現場での活用には、情報の不正確性(ハルシネーション)やプライバシー保護、著作権などのリスクへの適切な対応が不可欠である。
  • ガイドラインに基づき、「生成AIパイロット校」では教職員の校務効率化や児童生徒の探究的な学習でのAI活用が試みられている。
  • 専門家は、AIを恐れすぎず、その特性を理解した上で適切に向き合うことの重要性を強調する。

学校現場に「生成AI」が到来、文部科学省の指針とは

杉浦太陽氏と村上佳菜子氏がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」では、2025年5月4日(日・祝)の放送で「学校に生成AIがやってきた!」をテーマに、文部科学省初等中等教育局の寺島史朗(てらしましろう)氏をゲストに招き、教育現場における生成AIの活用法について議論が交わされた。

AI、特に近年のChatGPTやGeminiといった生成AIは、膨大なデータを学習して新たな文章や画像を生成するなど、創作物の生成に特化している。業務効率化や創作活動支援など、様々な分野での活用が期待される一方、漫画家の作風模倣や芸能人の声の悪用といった社会に影響を及ぼす事例も出てきており、その運用にはいくつかの課題が伴う。

特に重要な課題として挙げられるのが「情報の正確性」である。寺島氏は、生成AIは膨大な情報を学習するものの、事実とは異なる情報を出力する「ハルシネーション」を完全に防ぐことは極めて難しく、学校現場での利活用には一定のリスクが伴うと言及した。

文部科学省「生成AIに関するガイドライン」の要点

情報の不正確性(ハルシネーション)に加え、生成AIは大量のデータの偏りを反映したり、著作権、機密情報、個人情報の流出といったリスクも指摘されている。教育現場での導入においては、こうしたリスクを十分に把握し、適切な使い方を検討することが求められる。このような背景のもと、文部科学省は学校現場で生成AIを安全かつ効果的に活用できるよう「生成AIに関するガイドライン」を策定した。

ガイドラインの基本的な考え方として、「人間中心の利活用」と「情報活用能力の育成」の2点が示されている。「人間中心の利活用」では、生成AIを人間と対立的に捉えるのではなく、人間の能力をサポートし可能性を広げる有用な道具と捉え、生成されたものはあくまで参考として、最終的な判断と責任は人間が持つという基本姿勢の重要性を示している。

「情報活用能力の育成」においては、“生成AIを使うこと”自体を目的とするのではなく、それが児童生徒の資質能力育成や教育活動の目的達成に役立つかを見極めて活用すること、そしてネット上のルールやマナーを含む情報モラルの育成を強化することが示されている。生成AIはあくまで手段であり、その存在を前提として特性を理解し適切に扱える能力を育てることを目指す。

「生成AIパイロット校」の取り組み事例

文部科学省はガイドラインに基づき、「リーディングDXスクール 生成AIパイロット校」を指定し、教育現場や校務での生成AI活用に取り組んでいる。学校における利用場面は、大きく分けて「教職員が校務で使用するケース」と「児童生徒が学習活動で活用するケース」の2つがある。

教職員による利活用の具体例として、寺島氏は各種行事の案内文や「学年だより」のたたき台作成や誤字脱字チェックを挙げた。生成AIを活用することで、教員の確認時間を大幅に短縮できるという。また、授業で使用したワークシートや振り返りの内容を生成AIに読み込ませ、テスト問題のたたき台を作成するケースもあると解説した。

生徒の学習活動における活用事例では、ある小学校で「誤りを含むAI生成の記事」と「正確な実際の記事」を比較する授業を実施し、生徒が体感を通じて生成AIの特性や課題、情報との関わり方を学んだ事例が紹介された。生徒からは「インターネット上の情報をすぐに信じるのではなく、様々な資料と照らし合わせたり、自分の経験をもとに考えたりすることが大切だと感じました」といった反応があったという。

中学校のパイロット校では、グループ課題に取り組む際に生成AIを導入した事例がある。話し合いが進んだ段階で生成AIに新たな視点や助言を求めることで、より深い議論を交わすことができた。寺島氏は、特に少人数のグループでは異なる視点が出にくい場合があるが、生成AIを上手に活用すれば、提示された視点を踏まえてさらに考えを深めることができると補足した。

AI時代を生きる子どもたちへの適切な向き合い方

寺島氏は最後に、AI時代を生きる子どもたちが生成AIをはじめとするテクノロジーを道具として使いこなし、才能を開花させるためには、学校現場で生成AIが適切に利活用されることが望まれると述べた。教職員をはじめ、日頃から子どもと接する機会がある大人が、まずは自分たちが生成AIのリスクを正しく認識し、必要以上に恐れず適切に向き合っていくことが重要だと考えていると語った。

番組のエンディングでは、杉浦氏が「生成AI時代 子どもと一緒に学んでいこう」、村上氏が「生成AI 正しく理解し活用しよう」をそれぞれ注目ポイントとして挙げ、学校現場における生成AIの適切な利活用についてさらに詳しく知りたい場合は文部科学省のホームページを参照するよう呼びかけた。

(TOKYO FM「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」2025年5月4日(日・祝)放送より)

引用元:Yahoo!ニュース (TOKYO FM+)
学校現場で“生成AI”はどう役立つ? 文部科学省が策定した「生成AIガイドライン」を専門家が解説

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です