- 人工知能(AI)の開発促進とリスク対応の両立を図る新法案が、参議院で審議入りした。
- 法案の柱は、人権侵害などの悪質事案が発生した場合に国が調査し、事業者名を公表することである。
- 過度な規制で技術革新を妨げないよう罰則は設けず、既存法令での対処を基本とする一方、事業者には国への協力を責務として求める。
- 政府は今国会での法案成立を目指しており、科学技術政策担当相は「世界のモデルになる」バランスの取れた法制度だと強調した。
AI新法案、参院本会議で趣旨説明と質疑
人工知能(AI)に関する新たな法案が、5月16日の参議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りした。この法案は、AI技術の研究開発を促進すると同時に、それに伴うリスクへの対応も強化し、両者のバランスを取ることを目的としている。
悪質事案の調査・公表などが柱
法案の主な柱の一つは、AIに関連して人権侵害などの悪質な事案が発生した場合に、国が主体となって調査を行い、その結果を公表することである。さらに、法案では内閣総理大臣をトップとする「人工知能戦略本部」の設置や、開発・活用に関する国家戦略である「人工知能基本計画」の策定を明記している。これは、欧米に比べてAI分野の研究開発の遅れが指摘される現状を踏まえ、政府一丸となった推進体制を構築する狙いがある。
また、AIが犯罪に悪用されたり、個人情報の漏洩につながったりしたケースでは、国が事業者に対して「指導」や「助言」といった必要な措置を講じることができると規定している。事業者側には、これらの国の措置や調査への協力を責務として求めている。
バランス重視、罰則は設けず
法案の策定にあたっては、AI技術の急速な進展やイノベーションを過度な規制によって阻害しないよう配慮がなされている。そのため、悪質な事案への対処については、法案自体に罰則規定は設けず、刑法や著作権法といった既存の法令で対応することとしている。リスク対応と開発促進のバランスを重視したアプローチと言える。
城内実 科学技術政策担当相は、参院本会議での質疑において、この法案について「新技術にも柔軟に対応できるバランスが取れた法制度として世界のモデルになる」と強調した。AIに伴うリスクについては、既存法令とガイドラインとの組み合わせで対応していく考えを示している。これは、立憲民主党の杉尾秀哉氏の質問に対する答弁の中で述べられたものだ。
政府・与党は、このAI法案の今国会中の成立を目指している。AI技術の社会実装が進む中で、法の整備がどのように進むかが注目される。
引用元:時事ドットコム
AI法案が参院審議入り 悪質事案は調査・公表