- Gartnerの調査により、エンジニアリング・リーダーの77%がアプリケーションへのAI統合を、71%がソフトウェア・エンジニアリング・ワークフローへのAIツール利用を「重大または中程度の課題」と認識していることが判明した。
- AIエージェントやアシスタントの活用により、ソフトウェア・エンジニアリング人材の学歴が多様化し、2028年までにチームメンバーの40%が非テクノロジー系の学歴を持つようになるとGartnerは予測している。
- 組織はスキル評価や面接プラットフォームを活用した「スキルベース」の人材採用に移行しており、AIを活用した学習パスの設計も重要視されている。
アプリへのAI統合における課題と市場規模
調査会社Gartnerは、エンジニアリング・リーダーを対象とした最新の調査結果を発表した。それによると、アプリケーションにAIの能力を組み込んで機能と性能を向上させることを、回答者の77%が「重大または中程度の課題」と認識していることが明らかになった。また、ソフトウェア・エンジニアリングのワークフローを拡張する目的でAIツールを利用することも2番目に大きな課題として挙げられ、71%のエンジニアリング・リーダーがこれを同様に「重大または中程度の課題」と考えている。この調査は2024年10月から12月にかけて、米国と英国のソフトウェア・エンジニアリング/アプリケーション開発リーダー400人を対象に実施された。
Gartnerのバイス プレジデント アナリストであるジム・シャイブメア氏は、CEOがAIを自社の業界に最も大きな影響を与えるテクノロジーと認識していることから、AIエージェントのようなサービスへの関心が非常に高まっていると述べている。ビジネス・リーダーの期待が高まっているにもかかわらず、その実行は容易ではない現状を指摘した。現在、AIアプリケーション開発プラットフォームの市場規模は52億ドルと推定されており、多くの新興ベンダーと既存ハイパースケーラーがこの市場でプラットフォームを開発し、その機能を強化し続けている。シャイブメア氏は、エンジニアリング・リーダーに対し、異なるベンダーや大規模言語モデル (LLM)、AIサービスを組み合わせるのではなく、AIアプリケーション開発プラットフォームや最良のエコシステムを備えたプラットフォームを選択することで、拡張性、再利用性、一貫性を確保すべきだと提言している。
AIが変えるソフトウェア・エンジニアリング人材の未来
AIの進化は、ソフトウェア・エンジニアリングの人材像にも大きな影響を与えている。現在、AIアシスタントやAIエージェントはソフトウェア・エンジニアの学習パートナーとして機能し、エンジニアがソフトウェア・エンジニアリングの複雑かつ創造的な部分に集中できるようになっている。これにより、従来型のコンピュータ・サイエンス分野の経験がなくてもエンジニアリング職に就く人の増加につながっているという。
プリンシパル アナリストのニティッシュ・ティアギ氏は、デザイン、心理学、芸術など、サイエンス、テクノロジー、数学以外の経歴を有する人材をチーム・メンバーに迎え入れることで、新たな視点や創造的な問題解決アプローチが導入され、より革新的なソリューションや、豊かで包括的なユーザー・エクスペリエンスの提供につながると指摘する。Gartnerでは、2028年までに、生成AIによって、ソフトウェア・チーム・メンバーの40%が、従来型のソフトウェア・エンジニアリングやテクノロジー以外の学歴を持つ人材になると仮説を立てている(現在の20%から増加)。
AIがすべてのソフトウェア・エンジニアリング・タスクを代替できるわけではないため、組織は当面、AIを活用したツールからのアウトプットのレビューに注力する必要がある。そのため、ロジックの構築やアルゴリズムの開発など、優れた基礎スキルを備えたエンジニアを採用することが求められる。デザイン、芸術、哲学といったテクノロジー以外の分野の経験を持つ人材は、AIを活用して論理的な問題を解決するための新しい創造的な方法をもたらすだろうとティアギ氏は述べている。将来的には、技術系・非技術系双方の学歴の出身者からなる、ソフトウェア・エンジニア、UXデザイナー、プロダクト・マネージャー、さらにはデータ・サイエンティストで構成されるコンポーザブル型またはフュージョン型のプロダクト・チームが主流になるという。
スキルベースの人材採用と学習パスの重要性
学歴に関係なく生成AIのスキルを持つ適切な候補者を採用することは、極めて重要になる。これを実現するため、組織は純粋な履歴書や学歴に頼るのではなく、スキル・ベースの人材採用アプローチへと急速に移行しつつある。そうした組織では、適切な候補者を評価する手段として、スキル評価や面接プラットフォームを活用している。
さらに、新入社員/既存社員に向けて、個別に調整した学習パスを設計するために、AI手法やスキル・データを活用することもある。調査では、回答者の38%が、新しいスキルの習得にはAIを活用することが最も効果的な手法であると考えていることも明らかになった。
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