- ITアドバイザリー企業Gartnerが、市場で混同が見られる「AIエージェント」と「エージェント型AI」について、それぞれの定義と違いに関する見解を発表した。
- Gartnerは、エージェント型AIをAIエージェントよりも包括的で高度な概念と捉え、AIの自律性の進化段階を示している。
- 2028年までに日本企業の60%が、AGIベースの新たなエージェント型AIやヒューマノイドと共にビジネスを行うことが常態化すると予測している。
- 企業に対し、これらのテクノロジーの理解を深め、戦略的に導入して来るべき「AI共生時代」に備えることを提言している。
Gartnerが示すAIエージェントとエージェント型AIの整理
IT分野のリサーチ・アドバイザリー企業であるGartner(ガートナー)は、近年市場で注目度が高まる一方で、両者の違いについて混乱が生じている「AIエージェント」と「エージェント型AI(またはエージェンティックAI)」に関する同社の見解を発表した。これは、企業がAI技術の進化に適応し、「AI共生時代」に備えるための理解を深めることを目的としている。
それぞれの定義と関係性
Gartnerは、AIエージェントとエージェント型AIを以下のように定義している。
- AIエージェント: デジタルおよびリアルの環境で、状況を知覚し、意思決定を下し、アクションを起こし、目的を達成するためにAI技法を適用する自律的または半自律的なソフトウェア。
- エージェント型AI: 組織のために行動し、自律的に意思決定を下してアクションを起こすために、組織に代わって行動する権利を付与された、目標主導型のソフトウェア・エンティティ。記憶、計画、センシング、ツール利用、ガードレールなどのコンポーネントと共にAI手法を使用して、タスクを完了し、目標を達成する。
Gartnerのディスティングイッシュト バイス プレジデント アナリストである亦賀 忠明(亦賀 忠明)氏は、「AIエージェントとエージェント型AIの境界線は曖昧であり、市場でも混乱が見られる。Gartnerでは、AIエージェントをエージェント型AIの1つと捉えている」と述べている。すなわち、エージェント型AIはAIエージェントよりも包括的かつ進化的な概念であり、より高度で自律性の高いAI像を示唆しているということだ。
AIの進化段階と最新技術
Gartnerは、AIはその自律性や判断力に応じて段階的に進化していると分析している。現在の多くのAIエージェントは、ある程度の判断力でシンプルなタスクの一部を自律的に実行できる「手組み細工的な存在」である一方、新世代のエージェント型AIは記憶や計画、ツール活用などの機能を備え、複雑なタスクを自律的に目的指向で遂行する「エージェント性と目標指向性を備えた進化系」であるとしている。
AIエージェントやエージェント型AIに関連するテクノロジーも急速に進化しており、特にAIエージェントがツールを多用する際に一貫した思考や記憶を維持するためのプロトコルであるMCP(モデル・コンテキスト・プロトコル)や、AIエージェント同士が連携するためのA2A(Agent-to-Agent)のようなエージェント間プロトコルが注目されているとのことだ。
2028年の予測と企業への提言
Gartnerは、今後のAIの進化を見据え、2028年までには日本企業の60%で、AGI(汎用人工知能)ベースの新たなエージェント型AIやヒューマノイドと共にビジネスを行うことが当たり前となると予測している。亦賀氏は、AIが単なる支援ツールに留まらず、人を代替したり統制したりする領域にも拡大する可能性を指摘し、企業はAIエージェントやエージェント型AI、そしてAGIへの進化を「AI共生時代」と捉え、今から理解を深め戦略的に準備を進める必要があると提言している。そこでは、人間とAIの関係性に関する戦略が求められるということだ。
企業は、ベンダーが提示するAIエージェントの中には概念のみのベイパーウェアも存在しうることを認識しつつ、明確で堅実な技術を提示するベンダーを選定し、戦略的な導入と継続的な改善を通じて、来るべきAI共生時代への適応力を高めることが重要であるとGartnerは強調している。
引用元:ガートナー
Gartner、AIエージェントとエージェント型AIに関する見解を発表
引用元:BizZine
Gartner、AIエージェントとエージェント型AIの違いに関する見解を発表