- AIの急速な発展に伴い、その学習データに著作物が利用されることの是非が世界中で議論されており、データの利用を許諾しない「オプトアウト」の仕組みが主要な論点となっている。
- クリエイター向けプラットフォームnoteは、クリエイターがAI学習への意向を示せる「オプトアウト」機能を導入し、クリエイターの利益とAI活用の両立を模索している。
- 一方、X(旧Twitter)はプライバシーポリシーを改定し、ユーザーデータがAI学習に活用される可能性を明記(オプトアウトしない限り利用)し、同時に大規模スクレイピング対策も強化した。
- 著作権者側は、AI学習におけるデフォルトが「利用可」となるオプトアウト方式に強く反発し、より明確な許諾を得る「オプトイン」方式への移行を求める声が高まっている。
AI学習における「オプトアウト」の現状と論点
生成AIの目覚ましい進化は、その学習に用いられる膨大なデータ、特に著作権保護されたコンテンツの利用に関する新たな法的・倫理的課題を浮上させている。この議論の中心にあるのが、データ利用を拒否する意思を表明する「オプトアウト」の仕組みである。AIモデルの所有者側は、著作権者が自らの著作物をAIのトレーニングに使用しないよう明示的に除外(オプトアウト)しない限り、すべての公開データや作品を自由に利用できるべきだと提唱している。
オプトアウト方式には、特定のドメインやURLからのアクセスを制御する「ロケーションベース」と、コンテンツ個々へのアクセスを管理する「ユニットベース」の方法がある。しかし、著作権者側からは、ロケーションベースではドメイン管理権を持つ者が著作権者と限らない点や、オプトアウトされていない他のサイトからのアクセスを防げないという限界が指摘されている。また、この方式が過去の作品には遡及せず、新規に登場するAIツールごとに根気強くオプトアウトを繰り返す手間が生じることも問題視されている。
英国政府は、AIモデル開発支援のため、著作権保護された著作物のテキストマイニングおよびデータマイニングを、商業活動であっても著作権法から免除する提案を行っており、著作権者が権利を留保するかオプトアウトすることは可能とするアプローチを示している。これは、国際競争力のあるAI産業育成を前提とした動きである。
プラットフォームの対応:noteとXの動向
こうした国際的な議論が進む中で、各プラットフォームもAI学習に関する独自の対応を打ち出している。
メディアプラットフォームのnoteは、各クリエイターが自身の作品へのAI学習に対して意向(オプトアウト)を示せる機能を導入したと発表した。これは、noteが今後AIを活用した取り組みを進める上でのルール整備の第一歩と位置づけられ、AI学習とクリエイターの利益が両立する仕組みを構築することを目指している。具体的には、ユーザーが拒否意向を示した場合、生成AI事業者のユーザーエージェントをブロックするなどの対応を検討しているという。
一方、X(旧Twitter)は、2024年11月15日から新しいプライバシーポリシーを施行することを発表した。この変更により、ユーザーがX上に投稿したデータやその他の情報が、X自身だけでなく「第三者の協力会社」によってもAIモデルの学習に使用される可能性が正式に認められる。これは、ユーザーがオプトアウトしない限りデータが利用されるという方針であり、オプトアウトはX上の設定から行えるとしている。また、新しいプライバシーポリシーには、ウェブスクレイピング対策として、1日あたり100万件以上の投稿データを取得する組織に対し、15,000ドル(約225万円)の損害賠償を課すという条項も追加された。
著作権保護の原則と「オプトイン」への要求
オプトアウトの有効性に関する議論が続く中で、このモデルがデフォルトとして広く採用される可能性が高まっているが、著作権者側からの反発は強い。著作権保護の基本は、著作物の利用には許諾が必要であるという「オプトイン」方式にあると主張されている。オプトアウト方式は、対価の支払いなしに保護された著作物をトレーニングに用いることを許してしまい、LLM所有者に不当な優位性を与えるという批判がなされている。
インドでは、2023年デジタル個人データ保護法で、個人データを処理する前にデータ主体からの許可を求める「オプトイン」の原則が規定されており、著作物にも同様の概念を適用すべきだという声がある。しかし、このアプローチは国際的な規制動向に逆行する可能性も指摘されている。AIガバナンスのガイドライン開発に関する最近の報告書では、政府は著作権者の承認なしにLLMをトレーニングすることは著作権侵害に該当する可能性があると示唆しており、国際的なコンセンサス形成が待たれる状況である。
引用元:
- CreatorZine:note、各クリエイターが作品へのAI学習に対して意向(オプトアウト)を示せる機能を導入
- Ledge.ai:X(旧Twitter)、AI学習にユーザーデータを活用可能とする新プライバシーポリシーを11月15日に適用へ
- Law.asia:LLMからのオプトアウトで、著作権の回復を | インド