AIによる大量失業、想定より早く発生か　Anthropic CEOが警鐘

Anthropicのダリオ・アモデイ最高経営責任者（CEO）は、AI技術の進展に伴う大量失業が政治指導者や各企業が予想するよりも早く起き、社会がその事態への準備を整えていないと警告した。
同氏は、向こう1～5年間でエントリーレベルのホワイトカラー職の半分がAIによって消滅し、失業率を最大20％にまで押し上げる可能性があると予測。
OpenAIのサム・アルトマンCEOも同様の懸念を示しており、AIによる仕事の自動化とそれに伴う社会・経済の根本的変化への対応が急務となっている。

人工知能（AI）の急速な進展が雇用の大量喪失を引き起こし、世界経済に甚大な影響をもたらすとの警鐘が、AI分野の企業からも寄せられる状況となっている。米AI企業Anthropic（アンスロピック）のダリオ・アモデイCEOは、AI技術に関連する失業率の急増が世間の認識よりも早く訪れると警鐘を鳴らした。同氏は、現状でそうした事態への準備は整っていないとの見方を示している。

エントリーレベル職の消滅と失業率の急増予測

アモデイCEOが語った認識によれば、Anthropicをはじめとする各社が開発を急ぐAIツールによって、向こう1～5年間でエントリーレベルのホワイトカラー職の半分が消滅する可能性がある。これにより、米国の失業率は現在の約4.2％から最大20％にまで急上昇する恐れがあるという。具体的には、「文書を要約する、多数の情報源を分析して報告書にまとめる、コンピューターのコードを書く」といった業務はAIで代替可能だと指摘する。現在のAIは「頭のいい大学生と同程度に有能」であり、Anthropicが販売するAI技術は、人間の典型的な労働時間に匹敵する1日7時間近くの稼働が可能だとされる。

金融、コンサルティング、テクノロジー分野の職種もAIに置き換えられる可能性があり、大学卒業生やキャリアチェンジを目指す中堅世代にも深刻な影響が及ぶとの見解も示された。世界経済フォーラム（WEF）の最近の調査でも、AIの自動化を受けて雇用主の41％が2030年までの従業員削減を計画している。

業界トップの危機感と政府への警鐘

アモデイCEOは、この技術を開発する立場として、将来起こることを正直に伝える義務があると語る。一方で、多くの人々の意識にはまだ浸透していないと指摘し、「世間一般や政治家らが現状を十分に認識しているとは思わない」と述べた。彼は、人々が確実に順応するための適切な政策を今すぐ準備する必要があるとし、無策のままそうした事態を迎えることはできないと強調する。

同様の懸念は、生成AI「ChatGPT」を開発したOpenAIのサム・アルトマンCEOからも発せられている。アルトマン氏は、AIが将来的に仕事の70％を自動化する可能性を米上院議員に警告したと報じられており、「社会と経済が根本的に変わる。新しい仕事が生まれるかもしれないが、それは現在の仕事とはまったく異なるものになるだろう」と述べている。

米国政府は現在、AIの規制よりもその普及促進を重視し、中国のAI覇権を抑えることを政策の中心に置いている。しかしアモデイCEOは、この政策がAIによる大規模な失業問題を過小評価する理由にはならないと批判。「政府や他のAI企業も事態を軽く見ている」とし、自身もAIの普及で利益を得る立場であるものの、自らの警告が誤りとは限らないと訴えている。彼は、AIの影響を正確に測定し、それに基づいた政策づくりを早急に進める必要性を強く主張した。

AIの進化と人間の役割

アモデイCEOによれば、AIの進歩のスピードは驚異的であり、2年前には高校生レベルだったAIが今や優秀な大学生レベルを超えつつあるという。人間は間もなく「ほぼ全ての知的作業で」、自分たちを凌駕するAIとの対決を迫られるようになるだろう。最終的に、AIによる自動化から無事でいられる人間は誰もいなくなり、CEO自身もいずれはそうなるだろうと指摘している。

現在、多くの人々はAIを人間の能力を増強するために使用しているが、これは完全に人間を代替する自動化とは異なる。しかし、その差は急速に狭まりつつあるとアモデイ氏は分析する。現時点では6割の人がAIを人間の能力の増強に、4割の人が自動化にそれぞれ使用しているという。

このような状況下で、人間がAIの使い方を学ぶことが重要だとアモデイ氏は強調する。「テクノロジーがどこへ向かうのか、理解する方法を身に着ける必要がある。準備を整えていれば、順応できる可能性は格段に高まる」と述べた。また、AIシステムが間違いを犯し、意味をなさないコンテンツを生成する場合には人間がそれに気づくことが重要であり、そうしたAIの挙動に対しては、人間の立場から批判的に考察するべきだと付け加えた。

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