- フランスのAI企業Mistralが、チャットボット「Le Chat」に「Deep Researchモード」、ネイティブな多言語推論、高度な画像編集機能を追加した。
- 新機能「Deep Researchモード」は、Le Chatを協調的な調査アシスタントに変え、多様な情報源からデータを探し、整理、要約する。
- Le Chatは、オンプレミスでの企業データ接続に対応しており、機密データをクラウドにアップロードせずに内部データを分析できる点が競合との大きな差別化要素となる。
- 英語のみだった推論機能がフランス語、スペイン語、日本語を含む多言語でネイティブに利用可能となり、文中のコード切り替えにも対応する。
Mistral「Le Chat」に新機能、OpenAIやGoogleと競争激化
フランスのAIラボであるMistralは木曜日、同社のチャットボット「Le Chat」に新たな機能群を導入した。これにより、Le ChatはOpenAIやGoogleといった競合の能力にさらに近づいたと言えるだろう。今回のアップデートには、新しい「Deep Research(深層調査)モード」、ネイティブな多言語推論、そして高度な画像編集機能が含まれる。
このニュースは、Mistralが初のオープンソースAIオーディオモデル「Voxtral」をリリースした数日後に発表された。Voxtralは多言語での推論、文字起こしなどが可能で、Le Chatからも利用できる。
Mistralによると、新しいDeep Researchモードは競合他社が提供するものと同様に、Le Chatを協調的な調査アシスタントへと変貌させる。これは、ユーザーのニーズを計画し、明確化し、検索し、データを統合する機能だ。
「このモデルの機能は、ウェブ上の幅広い情報源を実際に調べて特定の質問に答えることだ」と、Mistralの製品責任者であるエリサ・サラマンカ氏(Elisa Salamanca)はTechCrunchに語った。「我々はこの機能が、消費者と企業の両方のユースケースにおいて非常に重要になると考えている。消費者にとっては、旅行について調査し、最適な旅行計画の網羅的な分析を提供できるためだ。そして企業にとっては、網羅的な調査を実行できる。」
オンプレミスデータ接続と企業向け戦略
サラマンカ氏によると、今回のアップデートはフリー、プロ、チーム、エンタープライズのすべてのティアで利用可能だが、MistralはLe ChatとMistralの生産性スイートを企業エコシステムに統合することに重点を置いている。これは、Mistralがデータコネクタを競合他社とは異なる方法で扱うためだ。
「非常に機密性の高いデータを持つ多くの顧客は、実際にはクラウドサービスを利用しないか、利用するとしても自社のオンプレミスで仮想プライベートクラウドを使用している」とサラマンカ氏は述べ、銀行、防衛、政府分野の顧客を例に挙げた。
これに対応するため、サラマンカ氏はMistralのLe Chatと生産性スイートがオンプレミスの企業データに接続すると語った。つまり、企業はLe Chatの深層推論などの機能を利用して、何もクラウドにアップロードすることなく、自社の内部データを分析できるのだ。これは、AzureホストのOpenAIやGoogle CloudベースのGeminiといったクラウドネイティブなLLMプラットフォームとの間で意味のある差別化要因となる。また、Mistralが他の生産性ツールを提供する道も開く。
「我々の価値提案の大部分、特にLe Chat Enterpriseをリリースする際には、Microsoft ExcelやGoogle Docsのようなオフィススイートが我々の機能とシームレスに連携するようにしたいと考えている」とサラマンカ氏は述べた。「Le Chat Enterpriseでリリースするコネクタは、まさにその方向への第一歩だ。我々はこれらのコネクタを社内で構築している。なぜなら、これがビジネスコンテキストでLe Chatを生産性向上ツールとして使用するための鍵になると信じているからだ。」
多言語推論、プロジェクト、画像編集機能の強化
深層推論以外にも、Le Chatは今回他のアップデートも行われた。これまでユーザーはMistralの新しい推論AIモデルである「Magistral」を通じてLe Chatを使って複雑な質問を推論できたが、その機能は以前は英語のみで利用可能であった。しかし、Mistralは現在、フランス語、スペイン語、日本語などを含む多言語でのネイティブな推論をサポートしている。Mistralは、Le Chatが文中で言語をコード切り替えすることも可能だと述べている。
Mistralの今回の最新アップデートには、「Projects」の追加も含まれる。これは、チャット、ドキュメント、アイデアを特定のスペースにグループ化することで、ユーザーの整理整頓を支援するものだ。各プロジェクトは独自のデフォルトライブラリを持ち、ユーザーが有効にしたツールや設定を記憶できる。Mistralは、引っ越しの計画、新製品機能のデザイン、仕事関連のプロジェクトの進捗管理などがユースケースに含まれると述べている。
最後に、Le Chatは画像編集機能も向上した。これによりユーザーは「オブジェクトを削除する」や「私を別の都市に配置する」といったプロンプトを使って画像を生成および編集できるようになった。
これらの新機能は、MistralをAI業界の最前線に立つ競合とより近い位置に置くものであり、Le Chatを単なるモデルのデモではなく、フルスタックな競争相手として位置づけるものだ。
引用元:TechCrunch
Mistral’s Le Chat chatbot gets a productivity push with new ‘deep research’ mode