- Cursorが6月16日にPro月額プランを従来の500回高速応答から20ドル使用上限制に変更、予期せぬ追加料金でユーザーから不満続出
- Anthropic Claude OpusやGoogle Gemini 2.5など最新AIモデルの高額化が背景、入力トークン1500万円、出力トークン7500万円の価格設定
- AnysphereがOpenAI、Anthropic、Google、xAIと複数年契約締結、月額200ドルのCursor Ultra高速制限プランを新設
- AI開発ツール業界全体でReplit等も価格上昇、5億ドルARR達成のCursorが競合圧力の中で市場リーダー地位維持に苦戦
Anysphere CEO Michael Truell氏がPro料金体系変更で公式謝罪
人気のAI駆動コーディング環境Cursorを運営するAnysphereのCEOであるMichael Truell(マイケル・トゥルエル)氏は7月7日、月額20ドル(約3,000円)のProプランに対する不適切な料金変更について公式謝罪を発表した。「この料金改定の展開を適切に処理できなかったことを認識しており、謝罪する。我々のコミュニケーションは十分に明確ではなく、多くのユーザーにとって驚きだった」とTruell氏はブログ投稿で述べた。
問題となったのは6月16日に実施されたCursorのPro料金体系変更だ。従来は、ProユーザーはOpenAI、Anthropic、Googleの高度なAIモデルで500回の高速応答を受け、その後は低速で無制限の応答を利用できた。しかし新体系では、月額20ドル(約3,000円)分の使用量をAPI料金で請求し、制限に達した後は追加クレジットの購入が必要となった。この変更により、特にコーディング分野で人気の高いAnthropic Claude モデルを使用する場合、わずか数回のプロンプトで使用量上限に達するケースが発生し、予期せぬ追加料金請求でユーザーの強い不満を招いた。
最新AIモデルの高額化がCursor料金体系変更の背景
Truell氏は料金変更の理由として、「新しいモデルは長期的なタスクでリクエストあたりより多くのトークンを消費する」と説明した。最新のAIモデルは複雑で多段階のタスクを完了するために大量の時間と計算リソースを消費し、従来のProプランではAnysphereがこれらのコストを負担していたが、現在はユーザーに転嫁している状況だ。
AI業界では多くのモデルが価格を下げている一方で、最先端性能のモデルは高額化が続いている。Anthropicが最近発表したClaude Opus 4は入力トークン100万件あたり15ドル(約2,250円)、出力トークン100万件あたり75ドル(約1万1,250円)と設定されており、4月にGoogleが発表したGemini 2.5 Proを上回る高価格となっている。さらにOpenAIとAnthropicは企業顧客に対して「優先」アクセスの追加料金を課し始めており、これらの費用がAIコーディングツールに波及している。競合のReplit等も最近、大規模タスクのAI処理費用を値上げしており、業界全体での価格上昇傾向が顕著となっている。
Cursorが5億ドルARR達成も競合圧力で市場地位に課題
CursorはProプランの月額課金により5億ドル(約750億円)のARRを達成し、市場で最も成功したAI製品の一つとなった。しかし現在、依存しているAIプロバイダーからの激しい競争に直面している。Anthropicが最近発表したAIコーディングツール「Claude Code」は企業向けで高い評価を得ており、同社のARRを40億ドル(約6,000億円)に押し上げ、Cursorからのユーザー流出も発生している。
この競争に対抗するため、Anysphereは最近OpenAI、Anthropic、Google、xAIと複数年契約を締結し、非常に高い利用制限を持つ月額200ドル(約3万円)のCursor Ultraプランを提供開始した。Anthropicの共同創設者であるJared Kaplan(ジャレッド・カプラン)氏も6月に、Cursorとの長期協力を計画していると述べている。しかし、Cursorは独自の内製モデルが合理的な競争力を持つまで、最先端モデルプロバイダーとの協力を停止することはできない状況にある。AnysphereはClaude Code製品開発を主導したAnthropic従業員2名を先週採用し、競争の激化を象徴している。
AI開発ツール業界全体で価格上昇とユーザー信頼回復が課題
Anysphereは予期せぬ料金請求を受けたユーザーに対して返金を行い、今後の料金変更についてより明確な説明を行うことを約束した。新しいプランでは、容量に基づいてAIモデルにルーティングするCursorの「自動モード」のみがProユーザーに無制限使用を提供している。同社はコメント要請に対してブログ投稿以外の回答を辞退した。
AI開発ツール業界では、高性能モデルの価格上昇と競合激化により、企業は収益性とユーザー満足度のバランスを取る困難に直面している。Cursorの事例は、AI技術の急速な進歩とコスト上昇が既存のビジネスモデルに与える影響を示しており、透明性の高い料金体系とユーザーコミュニケーションの重要性を浮き彫りにしている。CursorとAIモデル開発者間の緊張関係は今後も続くと予想され、業界全体での価格戦略の見直しが避けられない状況となっている。
引用元: TechCrunch
Cursor apologizes for unclear pricing changes that upset users