- ドナルド・トランプ大統領が推進する「One, Big, Beautiful Bill(大きく美しい法案)」が2025年5月22日に下院で僅差で可決された。
- 同法案には、州や自治体によるAIモデル、AIシステム、自動意思決定システムの規制を10年間禁止するという条項が含まれている。
- これにより、カリフォルニア州などで議論されている州独自のAI規制案が撤廃される可能性があり、AI規制に関する連邦政府の優位性が確立される見込みだ。
- OpenAIのサム・アルトマンCEOは、2023年と2025年でAI規制に対する姿勢が変化しており、規制の縮小を支持する発言をしている。
トランプ大統領の「大きく美しい法案」が下院を通過 AI規制を10年間禁止する条項を明記
ドナルド・トランプ大統領が推進してきた大規模な予算調整法案「One, Big, Beautiful Bill(大きく美しい法案)」が、2025年5月22日にアメリカ下院で可決された。この法案には、州や自治体が人工知能(AI)関連技術を規制することを10年間禁止するという、注目すべき条項が含まれている。
「大きく美しい法案」は、歳出削減や減税、債務上限引き上げなど多岐にわたる改革を目指すものだ。下院での採決は賛成215票、反対214票、棄権1票というわずかな差で可決され、法案の通過には5人の共和党議員が反対票を投じるという展開もあった。
AI規制禁止条項の広範な影響と「自動意思決定システム」の定義
法案に盛り込まれた「州や自治体が『AIモデル』『AIシステム』『自動意思決定システム(automated decision systems)』を規制することを10年間禁止する」という条項は、アメリカにおけるAI規制のあり方を大きく左右する可能性がある。現在、カリフォルニア州など複数の州で独自のAI規制案が議論されているが、この法案が成立すれば、それらの州ごとの規制が撤廃されることとなる。
法案では「自動意思決定システム」を「人間の意思決定に実質的な影響を与えたり、人間の意思決定に取って変わったりするために、簡略された出力を発行する機械学習や統計モデリング、データ分析、AIから派生したシステム」と定義している。この広範な定義により、禁止の対象となる規則が多岐にわたる可能性が指摘されている。
ホワイトハウスの見解とOpenAIの姿勢の変化
ホワイトハウスは、今回の下院での可決を受け、「トランプ大統領の『大きく美しい法案』は、繁栄・機会・安全保障というアメリカ第一主義の政策を法律として確立するという一世代に一度の機会であり、下院での可決によってゴールに一歩近づいた」という声明を発表した。
AI業界の主要プレイヤーであるOpenAIは、かつては「中国とのAI技術開発競争に勝つために規制を少なくするべき」と主張し、アメリカ政府に対して規制の縮小を提言していた。しかし、OpenAIのサム・アルトマンCEOは、2023年5月には「AIの害を最小限に抑えるために政府による規制介入が必要」と主張していたものの、2025年5月に連邦議会の公聴会ではAIの規制に反対する姿勢を示しており、その姿勢の変化も注目されている。
引用元:GIGAZINE
「AI規制を10年間禁止」という条項を含むトランプ大統領の「大きく美しい法案」が下院を通過