FutureHouse、「データ駆動型」生物学研究を支援するAIツール「Finch」をプレビュー公開

AI ART

  • エリック・シュミット氏が支援する非営利団体FutureHouseが、生物学研究を支援する新AIツール「Finch」を発表
  • 研究論文などの生物学データと質問プロンプトを入力すると、コードを実行し図表を生成して結果を分析
  • 同社CEOは「1年目の大学院生」のような能力と表現し、「数分でこれを行える能力は超能力だ」と主張
  • 生物学・創薬分野でのAI活用には期待が高まるも、実績不足や信頼性に課題が残る現状

FutureHouseの新AIツール「Finch」の概要

今後10年以内に「AIサイエンティスト」の構築を目指すエリック・シュミット氏支援の非営利団体FutureHouseが、生物学における「データ駆動型発見」を支援できるとする新ツールを発表した。この新ツールは、FutureHouseがAPIとプラットフォームを立ち上げてからわずか1週間後に登場した。

「Finch」と名付けられたこのツールは、生物学データ(主に研究論文の形式)とプロンプト(例:「がん転移の分子的ドライバーについて教えてください」)を受け取り、コードを実行して図を生成し、結果を検査する。Xへの一連の投稿で、FutureHouseの共同創設者兼CEOであるサム・ロドリケス(Sam Rodriques)氏はこれを「1年目の大学院生」に例えた。

「数分でこれをすべて行える能力は超能力だ」とロドリケス氏は述べている。「[Finch]は実際に本当にクールなものを見つけることになる[…]社内での私たち自身のプロジェクトでは、それが非常に素晴らしいものであることがわかった」。

科学プロセスの自動化を目指すAI企業の動向

多くのスタートアップや技術大手と同様に、FutureHouseの提案は、Finchやその他のAIツールがいつか科学プロセスのステップを自動化するというものだ。

今年初めのエッセイで、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン(Sam Altman)氏は、「超知能的な」AIツールが「科学的発見とイノベーションを大幅に加速する」可能性があると述べた。同様に、今週「科学のためのAI」プログラムを立ち上げたばかりのAnthropicのCEOは、AIが大半のがんの治療法の策定に役立つ可能性があると大胆に予測している。

しかし、証拠は不足している。多くの研究者は、今日のAIが科学的プロセスを導くのに特に有用であるとは考えていない。注目すべきことに、FutureHouseはまだAIツールによる科学的ブレークスルーや新たな発見を達成していない。

創薬分野におけるAI活用の期待と現実

特に創薬側の生物学は、AI企業にとって魅力的なターゲットだ。Precedence Researchによると、この市場は2024年に658億8,000万ドル(約9兆8,820億円)の価値があり、2034年までに1,603億1,000万ドル(約24兆465億円)に達する可能性があるという。

いくつかの成功例はあるものの、AIは実験室ですぐに魔法のような解決策をもたらしてはいない。ExscientiaやBenevolentAIなど、創薬にAIを採用している複数の企業が、近年高い注目を集めた臨床試験の失敗を経験している。一方、Google DeepMindのAlphaFold 3のような創薬のための主要なAIシステムの精度は、一般的に大きく変動する傾向がある。

Finchの課題と今後の展望

Finchも同様に「愚かな間違い」を犯すとロドリケス氏は述べており、そのためFutureHouseはクローズドベータ版の段階でその精度と信頼性を評価し、トレーニングを支援するバイオインフォマティシャンや計算生物学者を募集している。

生物学研究におけるAI活用は未だ発展途上の分野であり、Finchのような新ツールがどれだけ実際の研究現場で価値を証明できるかは今後の課題だ。科学的プロセスの複雑さを考えると、現時点でのAIツールは補助的な役割にとどまり、研究者の専門知識と判断が依然として不可欠である。

引用元:TechCrunch
FutureHouse previews an AI tool for ‘data-driven’ biology discovery

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